夏祭りの日に

それはある夏の日のことだった。夏と言っても七月の中頃で、これから来たる灼熱のことを憂いている余裕も多少はある。そんな日の夕暮れだ。
公園に櫓が建てられ、ちょうちんが光る。町中には盆踊りの音楽が流れる。なぜだかそれはなんとも寂しく、反響の掛かった音に幻想感を感じ、その上こうしているうちに取り返しのつかない時が流れてしまっているかのような、あがいてもあがききれない感情を抱く。
もしかするとそれは、もう自分が『あの時』という過去を今作ることができず、ふと、既に子供の心のままにまさしく青春の日々を過ごすのには遅いのだと気がついているのからかも知れない。
あのオレンジに染まる公園の中で、普段とは違う同級生のいち面をみて―そんな、その時は毎年来るものだと思っていた、ただ過ぎていく行事の一つだと思っていたその時間が、もう来ないのだった。